渋谷で迷子 スクランブルスクエア
2024-11-15

恐怖の谷

東京って怖いですよね。そんな東京の中でも最も怖いエリア。それが渋谷です。今回、会社説明会が行われたのはそんな渋谷の駅直結ビル、渋谷スクランブルスクエアです。高層階がオフィスビルみたいなアレ。なんかお洒落~ですよね。雨に濡れなくて済むし、通うには良いんじゃないでしょうか。ただ、初見の説明会の開催場所としては難しいような気がします。

計画通り

何が難しいかって、たどり着くのがですよ。この手のビルの入口、特にオフィスエリアの入口ってなんだかこう、裏技みたいなところからしかたどり着けないんですよね。ですが安心してください?わたしだって呑気に電車に揺られていたわけじゃあありません。調べときました。オフィスエリアの行き方。しかも!中央改札と南改札のどちらから出ても大丈夫。両方に対応済みです。完璧だ……。肩で風を切って電車を降り、流れに身を任せて改札へ。どちらの改札でも大丈夫なんですから。任せてくださいよ。お!そろそろ改札かな!(陣内智則)よっしゃどの改札なんやろ!(陣内智則)楽しみやなぁ!(陣内智則)

シン・南改札

ふざけるのもいい加減にしてほしいですよね。データに無い改札。眼鏡も割れかけました。早めについていたとはいえ、かなりまずいことになりました。初見の駅で、知らない改札から出てしまった。東京の駅って一度改札を出てしまうともう、方向はわかっていても道がないし、方向もわからない、地図アプリも機能しないしでめちゃくちゃなんです。異界なんです。

赤い文字

絶望的状況の中、奇跡的に一つの看板を見つけました。

渋谷スクランブルスクエア→

木の板に赤いインクで手書きされたその看板。道端で風に揺れている看板は、どう考えても公式のものではありませんでした。でも、手がかりはこれ以外にありません。わたしは思いました。きっとこれは新南改札から出てしまった人間が、スクランブルスクエアにたどり着いた証なんだ。彼が同じ道を歩む者に残した道標なんだと。これに賭けるしかありません。

谷の底

進んでいくと道はどんどん細くなりました。空気も冷たいような。脳裏にさっきの看板の、インクの赤色が蘇ります。ダメだ、嫌な予感を振り払い前に進みます。もう引き返しているような時間はありません。地下、というかこれは、洞窟?こんな場所が東京のど真ん中にあったなんて知りませんでした。通路を進むにつれ、周囲の空気はますます冷たくなり、圧迫するような静寂に包まれていきました。足元には細かい砂利が散らばり、靴音が妙に響きます。もうなにも見えていませんでした。何も見ようとはせず、ただ看板だけを信じて一歩ずつ前に進みます。

広間へ

進み続けると、突然!道が開け、大きな広間に出ました。ガラス張りの窓、行き交うスーツ姿の人々、大きな柱にはフロア案内の電光掲示。「……辿り着いた?」 立ち尽くしたわたしは目の前の光景を信じられずに眺めていました。間違いありません。スクランブルスクエアです。

時計を見ると集合時刻1分前。我にかえって周囲を探すと企業のパネルを持った方が見えました。急いで合流し名前を伝えます。

迷ったりしなかった?

「?はい、大丈夫でした。」

よかった、たまにいるんだよね。迷って出られなくなっちゃう子が。

その言葉に少し引っかかりを覚え、詳しく聞こうとしたその瞬間、定刻を知らせる声が響きました。開催場所への案内が始まり、その後はなんというか、いたって普通の説明会でした。


駅直結ってこういうことだったのか……


帰り道が不安でしたが、まあ何とかなるでしょう。