最近、ワイヤレスイヤホンの調子が良くありませんでした。
二年ほど前に買ったもので、大事に扱ってはいたんですが、接続が安定しなかったり、充電端子の接触が悪かったり、どうにも限界が近いようでした。
極めつけはバッテリーの劣化。満充電にしても数時間で切れてしまいます。近頃は長時間の移動も増えていましたから、特に充電切れが目立っていました。
ワイヤレスイヤホンには明確に寿命があります。いくら丁寧に扱って、毎日きれいにしていても、必ず最後はバッテリーが駄目になってしまいます。
私は音楽やらオーディオ機器にそこそこのこだわりを持っているんですが、このバッテリー寿命問題のため、ことワイヤレスイヤホンに関しては比較的安価なものを使うようにしていました。
その他に、落としたらこわいだとか、技術が発展途上なんじゃないかとかの理由もありますが、一番はバッテリーです。
ところで、私が音楽を聴いている時間の大半は移動中です。家にいるときも聴きはしますが、音楽を聴きながらの作業ができない性格のため、どうしても時間は少なくなります。
移動中は逆に、電車内で作業をしたくない性格が発揮されて、音楽聴取一筋になるんです。
で、移動中はワイヤレスイヤホンを使っています。
妙なことが起こっていますよね。
繰り返しになりますが、私は音楽やらオーディオ機器にそこそこのこだわりを持っています。そんな私にとって、音楽を聴く時間は重要なものであり、そこにお金をかけることを良しとしています。
一方で、その重要な時間のほとんどを、バッテリー問題により妥協をされた安価な再生機器に担わせているんですよ。
つい先日、このおかしな状況に気が付きました。
そして、二週間ほど苦しみ、のたうちまわった末、血の涙を流しながら、フラッグシップのワイヤレスイヤホンを購入しました。
洋服やアクセサリ、身につけるものにお金をかけたことがないため、わたし史上最も高級なアクセサリとなります。
かなりこわい。落としたらどうしようの気持ちもありますが、本当にこわいのは来るべき終わりです。消耗品にこの値段を出したのかと思うと、今でもちょっとだけ胸がサーっとなります。ですが、後悔はしていません。
むしろ、いつまでも長く使えるようなイヤホンは気合が足りていないんじゃあないでしょうか。
ワイヤレスイヤホンはその身を燃やし、雨風にさらされ、それでも鳴り続けているんですよ。バッテリー寿命だとか舐めたことを言っていちゃあダメだ。今この瞬間のために命を削る。そういう気概みたいなものを見習っていくべきなんじゃないか。そんなに未来が大事なら、せいぜい投資のつもりで電柱でも建てていればいい。
ワイヤレスイヤホンとは桜の花、蛍の光みたいなものです。
終りが来ると知っているからこそ、その最期に向かって、激しく、振動板を震わせるのでしょう。